家族信託、一度始めたらやめられない!?裁判例から学ぶ「受託者とサヨナラ」する難しさ

信託は一度始めると受託者の解任や契約解除が法律上非常に難しいのが現実です。感情的な対立だけでは不十分で、義務違反や目的不達成などの明確な証拠が求められます。

こんにちは!相続専門の文鳥、ぶん吉です(ちゅいヨ!)。

最近、老後の安心やスムーズな相続のために「家族信託」を始める人が増えています。でも、実際に始めてから「やっぱり任せた相手(受託者)と上手くいかない」「信託をやめたい」と悩むケースも少なくありません。実は、信託を途中でやめたり、受託者をクビにしたりするのは、皆さんが想像している以上にハードルが高いことなんだちゅいヨ。

今日は、過去の裁判例を見ながら、なぜ信託を解消するのが難しいのかを分かりやすく解説します。

信託の「解任」は想像以上にハードルが高い

一度財産を託した受託者を、こちらの都合で簡単にクビにできるかというと、答えは非常に厳しいものです。令和2年の東京地裁の判決(令和2年東京地判)が、その難しさを物語っています。

このケースでは、自分の土地建物を老後の生活保障のために親族に託した人が、「受託者のやり方が不適切だ!」と訴えて解任を求めました。しかし、裁判所はこれを認めませんでした。

裁判所は、単に「仲が悪くなった」「信頼できなくなった」という主観的な感情だけでは判断しません。実際に受託者がどのように事務を行っているか、義務に違反していないかという客観的な事実を非常に厳しくチェックします。

裁判所は、信託事務処理の状況や、当事者間の信頼関係の破壊の有無を慎重に判断し、簡単には解任を認めない。

つまり、受託者を辞めさせるには「誰が見てもこの受託者に任せ続けるのは不可能だ」という強い証拠が必要になるのです。

契約書に書いてあっても「解除」できない場合がある

「契約書に『いつでも解除できる』と書いておけば安心でしょ?」と思うかもしれません。しかし、ここが信託の不思議で恐ろしいところです。

信託は、単なる1対1の契約というより、一つの「組織」のような性質を持っています。中学生にもわかるように例えると「部活動」に似ています。

例えば、友達と2人で「一緒にテニスをしよう」と約束するのは一般的な契約(民法上の契約)で、お互いが嫌になればやめやすいものです。しかし、いったん「テニス部」という組織を作ってしまうと、自分が気に入らないからといって勝手に部を解散させたり、部長をクビにしたりすることは難しくなります。部の活動を安定させるためのルール(組織法的な考え方)が優先されるからです。

家族信託もこれと同じです。信託法という法律は、部活動のルールのように「仕組みの安定」をとても大事にします。そのため、たとえ個人同士の契約書に「解除できる」と書いてあっても、信託法という強いルール(特則)がそれを上書きしてしまい、簡単には解除させてもらえないことがあるんだちゅいヨ。

裁判で負けることもある?複数の主張が退けられた実例

平成30年の東京地裁の判決(平成30年東京地判)では、信託をやめたい側が「詐欺だ」「勘違い(錯誤)だった」「相手が約束を守っていない」「信託の目的が達成できない」「お互いにやめる合意があった」など、考えうるあらゆる理由を並べて訴えました。しかし、裁判所はそのすべてを退けました。

裁判所が最も重視したのは「信託の目的が達成されているか」という点です。受託者が決まった通りに財産を管理し、信託の目的(本人の生活保障など)がまだ続いている限り、たとえ双方が「やめよう」と言い出したとしても、信託を終わらせることはできません。

ここで皆さんに覚えておいてほしいのは、家族信託は一度走り出すと簡単には引き返せない「一方通行の道路」のようなものだということです。安易な気持ちで始めると、後で後悔しても仕組みを壊せない可能性があることを肝に銘じておかなければなりません。

よくある疑問(FAQ)

問い1:話し合い(合意)があれば信託をやめることはできますか? 

残念ながら、仲良く握手して「やめよう」と言えば済む話ではないんです。裁判所は「信託の安定性」をとても大事にします。平成30年の事例でも、合意があるという主張だけでは信託を終わらせることは認められませんでした。信託の目的がまだ残っているうちは、簡単にはやめられないと考えたほうがいいですね。

問い2:受託者が何もしない場合でも、解任は認められないのでしょうか?

 もし受託者がやるべき仕事を全くせず、信託の目的が果たせないほどひどい状態であれば、解任が認められる可能性はあります。ただし、その「仕事のサボり具合」を裁判所が納得するような客観的な証拠で証明しなければならないので、やはり一筋縄ではいきません。

問い3:契約書を作る時に気をつけることはありますか? 

「どんな時にやめられるか」という出口戦略を細かく決めておくことはとても大切です。でも、それ以上に「誰を信じて任せるか」という入り口の判断が一番重要になります。法律や裁判所の判断は、個人の契約書よりも「仕組みを守ること」を優先する場合があるからです。

まとめと未来へのヒント

家族信託は、認知症対策などに非常に有効な仕組みですが、一度始めると「受託者とサヨナラ」するのは至難の業です。だからこそ、信託を始める前に「本当にこの人に財産を託していいのか」を、これまでの人間関係も含めて慎重に見極める必要があります。

仕組みが強いからこそ、安心できる。でも、強いからこそ、一度入ると出にくい。

もし将来、受託者と意見が合わなくなったら、あなたなら「仕組み」と「感情」のどちらを優先しますか?この問いを、契約書にハンコを押す前に、ぜひ一度自分に投げかけてみてください。

専門家としての一言(司法書士・1級FPの視点)

信託契約を締結する際は、将来の紛争を防ぐために条項設計を極めて緻密に行う必要があります。特に親族間での信託は、一度感情的な対立が始まると法的な争いに発展しやすいため、信託監督人の設置や、第三者である専門家の継続的な関与を検討すべきです。制度のメリットだけでなく、一度動き出した信託を止めることの法的困難さを十分に理解した上で、慎重に設計を行うことが重要です。

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