都心はバブル、郊外は失速? 新築マンション価格が過去最高なのに、家探しが楽にならない「5つの意外な真実」

「首都圏の新築マンション価格が過去最高を更新」――このニュースを目にして、「もう自分には家は買えないのではないか」と不安を感じた方も多いのではないでしょうか。しかし、この衝撃的な数字の裏側では、都心と郊外で全く異なる現実が進行しています。

この記事では、平均価格の数字だけでは見えてこない首都圏マンション市場の「5つの意外な真実」を解き明かし、複雑化する現状を理解するための、そして賢い住宅購入を考えるためのヒントを提供します。

1. 全体が高騰しているわけではない。都心と郊外で市場は分裂している

まず押さえるべきは、市場の「二極化」です。首都圏全体の平均価格は9182万円(前年比17%増)、特に東京23区は1億3613万円(同22%増)と、1973年の集計開始以来の最高値を記録しました。神奈川県(7165万円)や埼玉県(6420万円)、千葉県(5842万円)でも軒並み価格は上昇しており、この高騰が郊外の実需層を直撃しています。

しかし、その一方で郊外では価格高騰により顧客離れが起きています。不動産経済研究所の松田忠司氏は、「売れ残りが出ており、値下げをしているケースもある」と指摘しており、市場に変調が起きていることがわかります。

この背景には、購入者層の違いがあります。都心は富裕層や海外投資家の旺盛な需要で価格が引き上げられているのに対し、郊外は実際に住むことを目的とする「実需層」が中心です。その実需層が、もはや現在の価格についていけなくなっているのです。

2. 価格だけの問題ではない。そもそも選択肢が過去50年で最も少なくなる

問題は価格だけではありません。これから家を探そうとする人々は、深刻な「供給不足」に直面する可能性があります。不動産経済研究所は、2026年の首都圏における新築マンションの供給戸数を、25年の予測値からさらに12%減少し、「過去50年で最低の水準」となる2万3000戸と予測しています。

なぜこれほどまでに供給が減るのでしょうか。都心部ではもともと用地が少なく、ホテルやオフィスとの土地の奪い合いが激しいことが一因です。しかし、より深刻なのは、郊外でデベロッパー(開発業者)が開発計画そのものを見送る動きが出ていることです。例えば、三井不動産レジデンシャルは郊外で仕入れたマンション用地のうち、駅から遠いなど立地条件が不利な数カ所で着工を見送っているといいます。

三井不動産レジデンシャルの山田貴夫副社長は、その内情を次のように語ります。

「郊外の購入者層の予算を考えると、建築コストの上昇分を販売価格に転嫁しにくい」

この言葉は、デベロッパーが「作りたくても、コストが高すぎて利益の出る価格では売れない」というジレンマに陥っていることを示しています。この構造が、供給減の大きな要因となっているのです。

3. 「お求めやすく」がもう無理に。郊外型のお手頃ブランドが岐路に立っている

供給減は、特にこれまで郊外の住宅購入を支えてきた「手頃な価格帯のマンション」という選択肢を脅かしています。

例えば、野村不動産ホールディングスは、価格を抑えた郊外型マンションブランド「オハナ」を展開してきました。しかし、同社の新井聡社長は「こうした価格帯の物件供給は難しくなる」と述べており、ブランドの存続自体が岐路に立たされていることを示唆しています。

この動きは、平均的な収入の「実需層」にとって、郊外での住宅購入のハードルをさらに引き上げる深刻な問題です。手の届く価格帯の選択肢そのものが、市場から消えつつあるのです。

4. デベロッパーの利益追求だけが原因ではない。本当の犯人は「建築費」

この異常な価格高騰は、単にデベロッパーが利益を追求しているから、という単純な話ではありません。本当の犯人は、高止まりを続ける「建築費」です。

建設物価調査会によると、東京地区の鉄筋コンクリート造マンションの建築費指数(2015年=100)は25年12月分で142.2に達し、過去最高の上げ幅を記録しています。

さらに追い打ちをかけているのが、住宅ローン金利の上昇です。三菱地所レジデンスの宮島正治社長は、「フルローンで住宅を買う場合が多い郊外の実需層にとって、金利上昇は需要のブレーキ要因になる」と分析します。宮島社長が指摘するように、建築費高騰と金利上昇という二重苦が、特に郊外の購入者を直撃しているのです。

つまり、建築費の高騰は「供給側」であるデベロッパーの事業計画を頓挫させ、金利の上昇は「需要側」である購入者の資金計画を直撃するという、市場の両側面を同時に締め付ける構造になっているのです。

5. 対策は打たれているが、効果は限定的かもしれない

この社会問題化する状況に対し、政府や不動産業界も対策に乗り出しています。

  • 業界の対策: 不動産協会は、投機的な短期転売を防ぐため、購入戸数の制限などを盛り込んだ対策をまとめています。
  • 国の対策: 住宅ローン減税の適用期間を5年間延長し、中古マンションについては床面積要件や上限価格を緩和するなど、住宅取得を後押しする制度拡充を行っています。

しかし、これらの対策が根本的な解決策となるかは不透明です。特に転売対策については「効果が薄いとの見方が多い」のが実情です。今後の金利の上昇状況によっては、ローン減税だけでは不十分で、さらなる購入促進策が必要になるとの声も上がっており、対策が現状に追いついていない可能性が懸念されます。

結論:まとめ

現在の首都圏マンション市場は、単なる価格高騰という一言では片付けられない、構造的な問題を抱えています。都心では富裕層の需要が価格を牽引する一方、郊外では建築費と金利の高騰が「実需層」の購買力を削ぎ、その結果デベロッパーが供給自体を絞り始め、「手頃なブランド」さえも市場から姿を消そうとしています。政府や業界の対策もこの負のスパイラルに追いついていないのが現状です。

選択肢が減り、コストが上昇し続ける中で、これからの「普通の暮らし」のための住まいは、どこに、どのように見つければ良いのでしょうか。平均価格の数字に惑わされず、市場の構造的な変化を理解することが、その答えを見つける第一歩となるはずです。

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