遺言

「全部あげたい」が火種になる?文鳥のぶん吉が教える、遺言と遺留分の賢いバランス

2026-03-11

遺言で「全部」と書いても、法律で決まった最低限の取り分は取り戻されます。トラブル回避には「払える設計」と「納得の設計」をセットで用意しましょう。

こんにちは!相続専門の文鳥、ぶん吉です(ちゅいヨ!)。

「お世話になったあの子に、家も貯金も全部あげたい」という優しい気持ち、とっても素敵です。でも、ちょっと待ってください。実は、良かれと思って書いた遺言が、残された家族をバラバラにする火種になってしまうことがあるんです。特に東京都新宿区のように「不動産は高いけれど、現金はそんなにない」というご家庭は、これからお話しする「遺留分(いりゅうぶん)」の問題で、せっかくの計画が台無しになるリスクが高いんですよ。

そもそも「遺留分」ってなに?(基本の理解)

遺留分とは、簡単に言うと「法律で守られた、家族のための最低限の取り分」のことです。 亡くなった人が「全財産を特定の人にゆずる」という遺言を書いても、残された家族が生活に困らないよう、最低限の分け前をお金で請求できる権利なんです。

具体的にどれくらいもらえるかというと、基本的には「財産全体の2分の1」が遺留分のベースになります(両親などの直系尊属のみが相続人の場合は3分の1)。この権利があるのは、配偶者(夫や妻)、子供、そして両親など。一方で、亡くなった人の「兄弟姉妹」にはこの権利はありません。

遺言は強いが、遺留分を無視すると紛争リスクが上がる

遺言書はとても力強いものですが、このルールを無視して作ると、後で家族同士が奪い合いになってしまうんです。

なぜ「全部あげる」遺言で揉めてしまうのか(典型的な失敗例)

「全部あげる」という遺言が、なぜトラブルになるのでしょうか。主な原因は3つあります。

  • 不動産がメインで、現金が少ないパターン 新宿区のような地域では、家の価値は高いけれど、手元の現金は少ないというケースがよくあります。家を一人に相続させると、他の家族に渡す遺留分の現金が足りなくなり、家を売るしかなくなって揉めてしまうのです。
  • 前妻の子や、疎遠な親族がいるパターン 普段付き合いがない親族は、遺言の内容に納得しにくいものです。「なぜあの子だけ?」という感情的な反発が、法律的な請求(遺留分侵害額請求)に直結します。
  • 介護や生活援助の差が大きいパターン 「ずっと介護してくれた子に多く残したい」という思いは自然です。でも、その理由が遺言書に書かれていないと、何も知らされていない他の兄弟は不公平感から怒り出してしまいます。

トラブルを未然に防ぐ「4つのステップ」

争いを避けて、あなたの思いを実現するために必要なステップをまとめました。

  1. 相続人の確定と財産の棚卸し(現状把握) まずは「誰が相続人か」を戸籍で調べ、家や貯金がいくらあるかを書き出します。 

ぶん吉の分析:誰がどれだけもらう権利があるのか、まずは今の状況を正確に知ることが、円満な解決への第一歩だちゅい!

  1. 生命保険や預貯金による「払える設計」の準備 遺留分を請求されたら、最後はお金で解決することになります。生命保険の「受取人」を工夫するなどして、請求された時にサッと払える現金を用意しておきます。 

ぶん吉の分析:最後はお金の話になるから、不動産に偏りすぎないように「出口」を作っておくのが賢いやり方だヨ。

  1. 遺言に理由を書く「付言事項」での「納得の設計」 遺言書の最後に「なぜこういう分け方にしたのか」という手紙のような文章(付言事項)を添えます。 

ぶん吉の分析:法律的なルールも大事だけど、最後は「心」の問題。感謝の言葉があるだけで、相手の攻撃的な気持ちが和らぐんだちゅい。

  1. 実務を動かす「遺言執行者」の指定 遺言の内容を実際に進めてくれるリーダー(遺言執行者)を決めておきます。 

ぶん吉の分析:手続きが途中で止まってしまうのが一番怖いこと。スムーズに動かしてくれる審判役をあらかじめ立てておこう!

あなたの家は大丈夫?チェックリスト

次の項目に一つでも当てはまるなら、遺留分を考えた対策が必要です。

  • 財産のほとんどが家(不動産)で、現金が少ない
  • 相続人同士が疎遠で、あまり連絡を取り合っていない
  • 前の結婚相手との間に子供がいる、または養子がいる
  • 子供によって、介護の負担や生前の援助に大きな差がある
  • 特定の子に家や商売道具をまるごと継がせたい
  • 二次相続(次に誰が亡くなるか)まで考えた設計がしたい

よくある疑問(FAQ)

疑問に思うポイントを整理しました。

Q:遺言に「遺留分は請求しないで」と書けば防げますか? A:残念ながら防げません。遺留分は法律で認められた権利なので、遺言書だけでその権利を奪うことはできないんです。

Q:兄弟姉妹にも遺留分はありますか? A:ありません。亡くなった人の兄弟姉妹には、最低限の取り分(遺留分)は認められていないので、遺言の内容が優先されます。

Q:遺留分を確実にゼロにする方法はありますか? A:現実的にはかなり難しいです。家庭裁判所の許可をもらって「遺留分を放棄」してもらう方法などはありますが、ハードルは非常に高いと考えた方がいいでしょう。

まとめと未来への問いかけ

遺留分の問題は、単なる「感情」のぶつかり合いだけではありません。実は、手元に現金があるかどうかという「資金繰り」の問題でもあるんです。

「全部あげたい」というあなたの温かい気持ちを、争いの種に変えないために。 お金の準備(払える設計)と言葉の準備(納得の設計)をセットで考えてみてください。それが、大切な家族を守る一番の近道になります。

もし今日、あなたの家族が遺言書を開いたら、みんなが納得して握手できる内容になっていますか?

専門家としての一言(司法書士・1級FPの視点)

相続において、特に都市部の不動産を所有されている方は、客観的な財産評価が欠かせません。遺留分を無視した遺言は、受遺者(もらう側)に重い金銭負担を強いる結果になることもあります。司法書士やファイナンシャルプランナーなどの専門家を交え、法的な有効性と、実際の支払い能力の両面から設計図を描くことが、円満な相続を実現するための確実なステップです。

デジタル遺言と成年後見の法改正!これからの相続と準備がどう変わる?

2026-02-14

パソコンで遺言が作れるデジタル遺言書が導入され、紛失リスクが減り便利になります。

成年後見制度も使いやすくなり、途中でやめたり必要な分だけ頼めるようになります。

こんにちは!相続専門の文鳥、ぶん吉です(ちゅいヨ!)。

みなさんは「遺言書(いごんしょ)」と聞いて、どんな姿を想像しますか?「難しい言葉を、一文字ずつ手書きするのは大変そう……」とか「一度書き始めたら、書き直すのが面倒だな」と感じる人も多いかもしれません。また、おじいちゃんやおばあちゃんを助ける「成年後見(せいねんこうけん)」という制度についても、「一度始めたら一生やめられない」という不安の声がありました。

でも大丈夫!実は今、こうしたルールがもっと使いやすく、もっと安全に変わろうとしています。みなさんにもぜひ知っておいてほしい、大切な未来のお話をわかりやすく解説するね。

驚きの変化その1:パソコンで作れる「デジタル遺言書」

これまでの法律では、遺言書は「自分の手で書くこと」が絶対のルールでした。でも新しいルールでは、今の「手書き」の良さも残しながら、新しくパソコンなどでデータとして作れる「デジタル遺言書」が仲間入りします。

この制度では、作ったデータを「法務局(ほうむきょく)」という国の機関が預かってくれます。預けるときには、法務局の人が「本当に本人が書いたものか」をしっかり確認します。その際、遺言の内容を声に出して全部読み上げる「全文の口述(ぜんぶんのこうじゅつ)」が必要になります。

本人の声とデータでしっかり確認ができるので、これまで必要だった「はんこ(押印)」も不要になります。誰かが勝手に書き換えたり、どこかにいってしまったりする心配がなくなるんだね。

ソース資料には、この改正の目的がこう書かれています。

書き直しの手間や紛失のリスクを軽減して利用を促す。

僕ら文鳥が羽でペンを持つのが難しいように、人間のみなさんも高齢になると字を書くのが大変になることがあります。パソコンでサクサク作れて、しかも国が守ってくれるなら、大切なメッセージをのこしやすくなるからとっても素敵だよね!

驚きの変化その2:柔軟になる「成年後見制度」

もう一つの大きなニュースは、認知症などで自分でお金の管理などが難しくなった人を支える「成年後見制度」の変化です。これまでは、一度このサポートを受け始めると、途中でやめることが原則できないという、ちょっと厳しいルールがありました。

新しいルールでは、体調が良くなったりしてサポートが必要なくなれば、途中で終了できるようになります。さらに、「遺産を分ける相談をするときだけ助けてほしい」というように、必要なときだけ、必要な内容に絞ってサポートを頼むことも可能になるんだ。

ソース資料では、これまでの課題をこう指摘しています。

従来は一度始めれば、必要性がなくなってもやめられなかった。

ずっと縛られる心配がなくなるから、これからは「困ったときのお守り」として、もっと気軽に制度を考えられるようになるね。ぶん吉としても、みんなが安心して暮らせるようになるのは、とっても嬉しいことなんだ。

まとめと未来への問いかけ

法律が変わることで、自分の思いをのこす方法や、困ったときに助け合う仕組みが、今までよりもずっと自由で安全なものになります。デジタル技術と優しいルールが合わさって、家族みんなが笑顔で過ごせる社会に近づいているんだね。

新しいルールを味方につけて、安心できる未来を一緒に作っていこうね(ちゅいヨ!)。

最後にひとつ。君なら、どんな風に自分の未来や大切な人への言葉をのこしたいかな?

専門家としての一言(司法書士・1級FPの視点)

今回のデジタル化や制度の柔軟化により、相続対策は「一度決めたら変えられない義務」から「状況に合わせて選べる権利」へと変化しています。制度が柔軟になるからこそ、不安を感じてから動くのではなく、早めに正しい情報を集めて自分に合った選択肢を持っておくことが重要です。これからの相続対策は、これまで以上に「早めの準備」が鍵となるでしょう。

公正証書遺言の「言葉選び」で家族が泣く?遺贈と相続の知られざる罠

2026-02-12

遺言書の「遺贈する」と「相続させる」は別物。言葉を間違えると手続や税で大損します。 特に孫や甥への遺言は要注意。借金や農地の手続で、遺産が受け取れないリスクがあるちゅい。

こんにちは!相続専門の文鳥、ぶん吉です(ちゅいヨ!)。司法書士と1級FPの知識をフル活用して、みんなの円満な相続をサポートしているちゅい!

「公正証書で遺言を作ったから、もう安心だ」……そう思っている人は多いかもしれないけど、実は「たった数文字の言葉選び」が、家族を困らせる時限爆弾になることがあるんだちゅい。法律の世界では、日常会話の「あげる」でも、選ぶ言葉によって手続きの難易度や税金の額がガラッと変わっちゃうんだ。今日は、プロが教える「遺言書の罠」を徹底解説するちゅい!

【衝撃1】「相続させる」と「遺贈する」は似て非なるもの

遺言書でよく見るこの2つの言葉。実は法律上の正体が全く違うんだちゅい。

  • 「相続させる」とは: 専門的には「特定財産承継遺言(または遺産分割方法の指定)」と呼ぶんだちゅい。これは法定相続人にのみ使える魔法の言葉。被相続人の死亡と同時に、何の手続きもしなくても直ちに権利が移転するのが最大の特徴だちゅい(最高裁判例より)。
  • 「遺贈する」とは: 遺言によって財産を無償で譲るという行為だちゅい。相続人だけでなく、友人や孫、団体など誰にでも使える言葉。ただし、手続きには原則として受遺者と相続人全員(または遺言執行者)の共同申請が必要になるんだ。

なぜプロが相続人に対して「相続させる」を勧めるのか。それは名義変更などの「利便性」だけじゃなく、「リスク管理」の面でも強力だからだちゅい。 ただし!2023年改正(民法899条の2)以降は、「相続させる」遺言であっても、法定相続分を超える部分については登記がないと第三者(差し押さえをした債権者など)に対抗できないことになったんだ。たとえ「相続させる」と書いてあっても、油断せずに早めに登記するのが鉄則だちゅい!

【衝撃2】孫への遺言が「無効」に?代襲相続の落とし穴

「長男に相続させる」と書いていたけど、その長男が自分より先に亡くなってしまった……。この場合、当然に孫が引き継げると思うかもしれないけど、ここに大きな落とし穴があるちゅい。

最高裁(平成23年2月22日判決)は、**「『相続させる』遺言では、特段の事情がない限り、孫への代襲相続は自動的には行われない」**と結論づけているんだ。つまり、せっかくの遺言が無効になって、親族みんなで遺産分割協議をやり直すことになりかねないんだちゅい。

これを防ぐためのプロのテクニックが**「予備的遺言(読み替え規定)」**。例えば、こんな条項を入れておくと安心だちゅい!

「遺言者の相続開始時において、本遺言の受遺者が相続人であるときは、『遺贈する』を『相続させる』と読み替える。」

あらかじめ「もしもの時」を想定して、相続人になった場合の手続きの負担を軽くしておく。このひと工夫が家族を救うちゅい!

【衝撃3】農地や借地権を渡したいなら「言葉」を間違えるな

不動産の種類によっては、言葉選びのミスが「名義変更不可能」という悲劇を招くちゅい。

1. 農地の「特定遺贈」vs「包括遺贈」

農地を相続人以外(孫など)に渡したい時、単に「この土地を遺贈する」という**「特定遺贈」にすると、農地法3条に基づく農業委員会の許可が必要になるんだ。農業をやっていない孫だと、許可が下りず名義変更できないリスクがあるちゅい。ところが、「財産の全部を遺贈する」といった「包括遺贈」**であれば、相続人以外であっても相続と同様に農地法の許可は不要になるんだ(ソース6)。言葉一つで許可の壁を越えられるかどうかが決まるんだちゅい!

2. 借地権・借家権の壁

賃借権を「遺贈」する場合、原則として大家さんの承諾が必要だけど、「相続させる」遺言なら承諾なしで引き継げるちゅい。土地や建物の権利関係は、事前にしっかり調査しておかないと後で泣くことになるちゅいヨ!

【衝撃4】借金だけが相続人に残る?「特定遺贈」と負債の罠

財産には借金などの「マイナスの財産」もあるちゅい。ここに税金と感情のダブルパンチが隠れているんだ。

特定の財産を指名する「特定遺贈」では、特に指定がない限り、受遺者は借金を引き継ぐ義務がないんだちゅい。一見ラッキーに見えるけど、実は**「相続税法第13条」のルールにより、特定遺贈で財産を取得した人が引き継いだ債務は、相続税の計算上「債務控除」が受けられない**んだ。

実際、信託銀行のあっせん事案(令和6年度第1号)では、孫に不動産を遺贈する条項に「債務(ローン)を負担させる」という文言がなかったため、家族間で大きな紛争になったケースがあるちゅい。 ローン付き不動産を渡すなら、必ず**「負担付遺贈」**として「ローンの残金を支払うことを条件に遺贈する」と明記しなければ、残された家族の間で不公平が生じてしまうんだちゅい!

【最新情報】2023年改正で「遺贈」のデメリットが一つ消えた?

最後に最新の法改正情報をアップデートするちゅい! 2023年4月より、不動産登記法が変わったんだ。これまで「遺贈」の最大の弱点は、受遺者が一人で登記申請できない(共同申請)ことだったけど、「相続人に対する遺贈」であれば、受遺者が単独で登記申請できるようになったんだちゅい!

これにより「相続させる」との利便性の差はグッと縮まったけど、農地法や税務上の債務控除のルールまでは変わっていないから注意が必要だちゅい。法律は常に進化しているから、古い常識で遺言を書くのはとっても危なっかしいんだちゅいヨ!

まとめと問いかけ

遺言書は、あなたが家族に残す最後の「愛のメッセージ」だちゅい。でも同時に、一文字のミスで効果が変わってしまう「厳格な法的文書」でもあるんだ。

「遺贈する」と「相続させる」。

あなたの遺言書にあるその言葉は、本当に、あなたが守りたい人を幸せにする言葉になっていますか?

専門家としての一言(司法書士・1級FPの視点)

遺言書作成において、用語の選択は実務上の手続コストや税務負担を大きく左右します。特に2023年の改正以降、登記手続の運用は大きく変わりました。最新の法務と税務の両面から、ご自身の意思が確実に実現される文言になっているか、一度専門家のリーガルチェックを受けることを強くお勧めいたします。

遺言書が動画になる?知らないと損する、相続の未来を変える3つの大変革

2026-01-31

はじめに

「遺言」と聞くと、多くの人が厳かな書斎で筆をとり、署名の下に朱肉の印鑑を捺す、そんな伝統的な光景を思い浮かべるかもしれません。しかし、私たちの生活がスマートフォンやビデオ通話、電子署名で成り立っている現代において、その古風なイメージは本当にふさわしいのでしょうか?

実は今、日本の法制度の舞台裏で、この「遺言」のあり方を根本から覆すかもしれない、大きな議論が交わされています。この記事では、法制審議会で検討されている、私たちの相続の未来に直結する、特に驚くべき3つの変革案を分かりやすく解説します。

——————————————————————————–

1. 「遺言動画」が法的に認められる時代へ

現在検討されている最も革命的な変更案が、「録音・録画」による遺言の作成を認めるというものです。これは単一のアイデアではなく、遺言者の選択肢を広げるため、主に二つの方式が提案されており、パブリック・コメントでも多くの支持を集めました。

一つは、**証人の立ち会いのもとで privately に記録する方式(甲案)**です。遺言者が一人以上の証人の前で遺言の全文を口述し、その様子を映像や音声で記録するもので、より手軽で柔軟な利用が想定されます。

もう一つは、**法務局などの公的機関で記録・保管する方式(丙案)**です。遺言者が公証役場のような公的機関に出向き、職員の前で遺言を口述、その記録を公式に保管してもらうもので、 notarized will のように高い安全性と信頼性が担保されます。

この変革が目指すのは、アクセシビリティの向上という政策目標です。病気や身体的な理由で自筆が困難な人でも、自分の言葉で直接、遺志を遺せるようになります。ただし、「本当に本人の意思なのか」「映像が偽造されるリスクはないのか」といった記録の真正性をどう担保するかが、この制度が実現するための重要な鍵となります。

——————————————————————————–

2. 遺言書の「脱ハンコ」は是か非か?ゆれる伝統と合理性

もう一つの大きな論点が、自筆証書遺言における「押印」義務の廃止です。行政手続きなどで進む「脱ハンコ」の流れを、遺言の世界にも適用しようという提案が、デジタル化と効率性を求める声に応える形で出ています。

しかし、この提案には法曹界から根強い慎重論も出ています。特に、遺言という行為の特殊性を重く見る意見が際立っています。

遺言のように、本人の死後にその真意を確認することができない一方的な意思表示についてまで押印を不要とすることは、安易な時流に乗っただけで合理性を欠くものではないか。

この反対意見の根底には、ハンコは単なる伝統ではないという考えがあります。押印という物理的な行為は、遺言者の「軽率な判断」を防ぎ、これが「最終的かつ熟慮された意思」であることを確認させるための、一種の「冷却期間」として機能してきたというのです。本人が亡くなった後ではもう誰もその真意を問うことができない、この一方的な法律行為において、手続き上のセキュリティをどこまで重視するか。この議論は、現代社会が求めるデジタル効率性と、伝統的な手続きが持つ重みとの間で、日本社会が直面する大きな緊張関係を象徴しています。

——————————————————————————–

3. 「うっかりミス」が命取りにならない?より柔軟になる証人ルール

これまでの法律では、遺言を作成する際の証人ルールは非常に厳格でした。例えば、遺産を受け取る予定の「受遺者、その配偶者、及び直系血族」といった利害関係者がうっかり証人になってしまうと、そのたった一つのミスで遺言書全体が無効になるという、極めて厳しい規定がありました。

この問題に対し、より柔軟で現実的な解決策が提案されています。新しい案では、もし利害関係者が証人になったとしても、遺言全体が無効になるわけではありません。無効になるのは、その証人が利益を受ける部分のみに限定され、遺言の他の部分は有効なまま残る、というものです。

この変更は、単なる手続きの緩和ではありません。法律の哲学が、「形式的な過ちを罰する」ことから、「遺言者の最終的な意思をできる限り尊重する」ことへとシフトしていることの明確な表れです。より現実的で、人々の想いに寄り添う法制度への転換点と言えるでしょう。

——————————————————————————–

おわりに

人生の終焉という最も重要な瞬間のための文書である遺言書。そのあり方が、新しいテクノロジーや社会の変化に合わせて、今まさに大きく変わろうとしています。

あなたの最後の想いを、最もあなたらしく伝える方法は、紙とペンでしょうか?それとも、未来のテクノロジーでしょうか?この法改正の議論は、私たち一人ひとりにその問いを投げかけています。

2025年10月スタート!オンライン公正証書遺言を自宅から作る前に必ず知っておきたい4つのポイント

2026-01-25

公正証書遺言は、「残された家族の争いを防ぐ」という意味で、もっとも信頼性の高い遺言の形です。
2025年10月1日からは、その公正証書遺言を含む公正証書の作成手続きがデジタル化され、条件を満たせば自宅などからオンラインで作成できる制度が始まりました。

ただし、「オンライン=簡単・スピーディー」と思ってしまうと危険です。

結論からお伝えすると、

  • 準備の負担や法的な注意点は「対面方式」とほとんど変わらない
  • むしろ機材・環境・遺言能力の確認など、新たに気をつけるポイントが増えている
  • 「オンラインでできるから、とりあえず軽く作っておこう」という感覚で臨むと、後で無効主張の火種になりうる

というのが専門家としての実感です。

この記事では、

  • オンライン公正証書遺言が「どこまで便利」で「どこから大変」なのか
  • どんな人に向いていて、どんな人はあえて対面方式を選んだほうがいいのか
  • 有効な遺言にするために、今のうちから準備しておきたいこと

を、「意外と知られていない4つのポイント」に分けて分かりやすく解説します。
東京都新宿区周辺で終活・遺言を考えている方はもちろん、「地方の親の遺言をオンラインで作れないか」とお考えのご家族にも参考になる内容です。

1.オンラインでも「即日でサクッと」は無理。準備期間はこれまで通り必要

デジタル化と聞くと、

  • 予約して
  • その日にオンラインでつないで
  • 1時間くらい話したら、その場で全部完了

というイメージを持たれる方が少なくありません。

ところが実務的には、準備にかかる時間は対面方式とほとんど変わりません。

公証人とのウェブ会議そのものは、対面と同じくおおむね1時間程度です。
しかし、その前に必要なプロセスはオンラインでも変わりません。

例えば、こんな流れです。

  • どの財産を誰にどう引き継がせたいか、家族構成や思いを整理する
  • 専門家(司法書士など)と相談しながら、遺言の方針・文案を固める
  • 公証役場と日程調整を行い、必要書類を揃える
    • 戸籍謄本・除籍謄本・住民票
    • 不動産登記簿謄本
    • 登記事項証明書、固定資産税評価証明書 など

この「相談~文案作成~書類収集」に、少なくとも2週間~1か月前後かかるのが現実です。

実際、当事務所にご相談いただく方でも、
「急に体調を崩した親のために、1週間以内にオンラインで遺言を作りたい」
というご希望をいただくことがありますが、内容の検討や書類の取り寄せを考えると、オンラインだからといって劇的にスピードアップできるわけではありません。

オンライン公正証書遺言の一番のメリットは、

  • 高齢や病気で外出が大変な方
  • 公証役場までの距離が遠い地方在住の方
  • 東京に住む子どもが、地方の親の遺言作成をオンラインでサポートしたい場合

といったケースで、移動の負担と時間を減らせることです。
「思い立ったらすぐ、その日中に作れる」というスピード感を期待すると、肩透かしを食う制度だと理解しておきましょう。

2.スマホ&カフェでは絶対NG。オンライン遺言には意外と厳しい「環境と機材」の条件

「Zoom会議みたいなものなら、スマホ片手にどこからでもできるのでは?」

ここが、多くの方が勘違いしやすいポイントです。
オンラインで公正証書を作成する“リモート方式”には、法務省・日本公証人連合会の資料でかなり細かい技術要件・環境要件が定められています。

代表的なものだけ挙げると:

  • 使用できるのはパソコンのみ(スマホ・タブレットは不可)
  • OSは Windows10/11 または最新3バージョン以内のMacOS
  • Web会議に対応したカメラ・マイクが必要
  • 電子サインを行うための
    • タッチ入力ができるディスプレイ、または
    • ペンタブレット+電子ペン
  • 参加するパソコンでメールを受信できること(招待URLや電子サイン用ファイルをやり取りするため)

さらに、場所の条件も見逃せません。

  • 原則、自宅などの「個室」から参加すること
  • カフェ・コワーキングスペース・病室の大部屋など、第三者の出入りがある場所はNG
  • バーチャル背景は禁止。公証人がカメラ越しに「部屋の状況」を確認し、遺言者の意思決定に不当な影響を与える人物がいないかチェックする

要するに、
スマホ1台で、カフェからサクッとオンライン遺言――という使い方は制度の想定外です。

また、リモート方式は、

  • 嘱託人(遺言をする本人など)がリモート利用を希望していること
  • 公証人が「リモートでも本人確認・真意確認が十分にできる」と判断したこと

という要件を満たした場合に限られます。
さらに、2025年10月1日時点では、全国すべての公証役場で利用できるわけではなく、「指定公証人」のいる役場から順次スタートする予定です。

オンラインでの作成を希望する場合は、

  • 自分のエリアでどの公証役場がリモート対応なのか
  • 必要な機材を用意できるのか

を、早めに専門家経由で確認しておくとスムーズです。

3.デジタルでも「絶対に無効にならない」わけではない――最大の争点はやはり「遺言能力」

「公証人が関わる公正証書遺言なら、オンラインで作ればなおさら完璧に近いのでは?」
ここにも、注意すべき落とし穴があります。

公正証書遺言は、自筆証書遺言に比べると方式の不備で無効になるリスクは低いものの、

  • 遺言者に「遺言能力」がなかった
  • 証人の要件を満たしていなかった
  • 公証人への口授(口頭で内容を伝えるプロセス)が足りないと判断された

といった理由で、裁判で無効と判断されることも実際にあります。

オンラインになっても、この基本構造は変わりません。

特に重要なのが「遺言能力」です。

  • 遺言の内容を理解し、その結果を自分で判断できるだけの力があったか
  • 認知症の進行状況や、服薬の影響で判断力が大きく落ちていなかったか

といった点について、医療記録(カルテ)や診断書をもとに相続開始後に争われる余地は、今後も残ります。

リモート方式では、公証人が画面越しに遺言者の様子を確認しますが、
対面よりも「その場の空気感」や細かな変化が伝わりにくいのは否めません。

オンラインで公正証書遺言を作る場合ほど、

  • 必要に応じて主治医の診断書や意見書を用意しておく
  • 遺言を作るに至った経緯や家族への思いを、別途「付言事項」やメモなどに残しておく

といった「証拠の積み増し」を意識しておくことが、将来の紛争予防として重要になってきます。

4.手続きは新しくても、裁判所が見るポイントは変わらない――最高裁判例が示す「真意重視」の考え方

オンライン公正証書遺言の法的効力は、紙で作成した従来の公正証書遺言と同じです。

  • 家庭裁判所での「検認」は不要
  • 原則として、形式面の不備で無効になるリスクは低い

といったメリットも、そのまま引き継がれます。

一方で、どのような場合に無効か、有効かという判断枠組みは、これまでの判例法理がそのまま活きてきます。

代表的なものとして、最高裁平成13年3月27日判決があります。

この判決では、

  • 公正証書遺言作成の場に、本来は証人になれない人(相続人など)が同席していた
  • それでも、法律上必要とされる証人2名は適格であり
  • 同席していた人によって遺言内容が左右されたなどの「特段の事情」が認められない

という事情のもとで、遺言は有効と判断されました。

ここから読み取れる大切なポイントは、
裁判所は「形式だけ」を見ているわけではなく、
「遺言者の真意がきちんと反映されているか」を実質的に重視しているということです。

オンライン化によって、

  • ウェブ会議の録画
  • 電子データとしての経緯の保存

など、「後から検証できる客観的な手がかり」が増える側面もあります。
だからこそ、

  • 公証人に伝える内容
  • 事前に専門家と整理しておく事情
  • 同席する証人や家族の関わり方

といった「プロセスの質」が、今まで以上に大切になります。

オンラインで作るか・対面で作るかを決める前に確認したいチェックポイント

オンライン公正証書遺言は、

  • 公証役場が遠い
  • 身体が不自由で移動が難しい
  • 忙しくて何度も外出できない

といった方にとって、とても心強い新しい選択肢です。

ただ、「便利になった=簡単になった」わけではありません。

むしろ、

  • 機材・環境のハードル
  • 遺言能力をめぐる将来の紛争リスク
  • データ化された手続きだからこそ、プロセスの説明責任が重くなること

を踏まえると、専門家と一緒に設計していく重要性は、以前よりも増しています。

オンラインか対面かを決める前に、次のような点を一度確認してみてください。

  • 自分(または親)の体力・健康状態から見て、どの方式が負担が少ないか
  • 必要なパソコンや機材を無理なく用意できるか
  • 認知症や持病など、将来「遺言能力」が争われそうな要素がないか
  • 家族にどこまで内容を共有しておくか(付言事項やビデオメッセージ等も含めて)

東京都新宿区北新宿の「司法書士シエン」では、

  • 対面の公正証書遺言
  • オンライン公正証書遺言(リモート方式)

のいずれについても、「法」と「お金」の両面から、事前設計と公証役場とのやり取りを一括サポートしています。
「うちの親の場合、オンラインと対面どちらがいいのか?」といったご相談からでも構いませんので、気になる方は早めにご相談ください。

執筆者情報
司法書士シエン
東京都新宿区北新宿1丁目8番22号斎藤ビル102
坂大一雄(ばんだいかずお)
・司法書士
・1級ファイナンシャルプランナー
・上級相続診断士
・民事信託士

相続・遺言・家族信託を中心に、「法」と「お金」の両面から、
ご家族が円満に次の世代へバトンを渡せるようお手伝いしています。

keyboard_arrow_up

0363040883 問い合わせバナー LINE追加バナー